今はロングやファンボードなどに乗っている、サーフィンを始めたばかりの初心者サーファーでも、最終的にはショートボードで乗りたいと考えている方も少なくないと思います。
また、現在ショートボードに挑戦し始めたものの、「なかなか波に乗れない」「乗れてもすぐに失速してしまう」と悩んでいるかもしれません。

ロングからショートも乗りたい?
ショートボードは浮力が少なく、ロングボードよりもテイクオフの難易度が高いですが、適切なテクニックを身につけることで、乗れる本数を増やし、サーフィンの楽しさを倍増させることができます。今回は、VSCのメソッドを活用し、ショートボード初心者がより多くの波に乗るための基礎を解説します。
1. 最適なボード選び
ショートボードに挑戦するとき、多くの人が「かっこいい」や「プロっぽい」ボードを選びがちですが、ボード選びを間違えると波に乗る以前にパドリングがうまくできず、波をキャッチできません。初心者向けのショートボード選びのポイントは以下の通りです。
適度な浮力
ショートボードでもあまり浮力が有りすぎると上達が遅れます。特に中途半端に浮力が有ると、テイクオフ自体も早くは無く、ライディングも安定しないというすべてが中途半端な状態になってしまいます。今後、ショートボードを乗りたいと思うなら最短で上達するコツは、早めに浮力を下げていくことです。
パドリングが辛いから、なかなか波に乗れないからと言って中途半端な浮力で練習するなら、浮力の大きな板でしっかり乗れるようになってからショートに転向した方が早いかもしれません。
ショートで浮力の無い板に乗るメリットは、パドリングをボードの芯に乗って出来ることです。

まずはショートでパドリングの芯を意識しよう
パドリングがしっかりしてくれば、どんな板でも困ることはありません。当然ショートでもパドリングがしっかり漕げればテイクオフに困ることもないので、パドリングが出来るか出来ないかは非常に重要なポイントとなります。
逆に考えれば、パドリングだけはプロ並みに漕げるとなれば、わざわざロングやミッドレングスに誰も乗らないでしょう。
ロッカーの少ないボード
ロッカー(ボードの反り)が強すぎるとスピードが出しにくく、テイクオフが難しくなります。
これもよくあるパターンなのですが、今時の板はロッカーが強いボードが多くあります。
ボードのロッカーとは、ボードの縦方向の反りのことですが、この反りがあまりにも強いとパドリングのスピードも出づらくなりますし、もし立ったとしても回転性が良すぎて板のコントロールがしづらくなってしまいます。
ロッカーの無いショートボードを選ぶと良いです。
lostのDRIVER
PYZELのPowerTigerというモデルはパドルも早くおすすめです。
付録と長さに関してはこちらのページから参考にして選んでください。
長さのある板
ショートボード初心者の方がまず覚えるべきは【波のキャッチ】です。
波に乗れなければ立つこともライディングも出来ません。
まずは波に乗ることを考えると出来るだけ長さがあるボードの方が、波に押されている時間が長くなり波を捕まえるのが有利になります。
浮力を合わせても、自分の入る海はいつも波が小さいからと言って”小波用のモデル”などを選んでしまうと、波のキャッチに困ることになります。
小波用のモデルというのは、基本的にライディングが出来るサーファーが小波でも立って沈まずに加速がしやすいという設計になっています。
テイクオフが早いわけでないですし、まだちゃんとライディングが出来ない初心者の方は、小波モデルを選んでしまうと幅の比率が高まり長さが短くなってしまうのでデメリットの方が多くなってしまいますので気を付けてくださいね。
2. ボード上の適切なポジションを理解する
パドリングやテイクオフ時に適切なポジションを取ることで、スムーズに波をキャッチできます。以下のポイントを意識しましょう。
ボードの中心にバランスとる姿勢
ボードが左右に揺れすぎると推進力が低下します。
よくある【おへそ一点姿勢】では、カラダはバランスが取れてもボードが動いてしまっているので、実際には進むということに関しては非効率になります。
VSCでは4点パドルと言って、
・肋骨の一番下の2点
・ヒザか膝の上あたりのモモ部分の2点
合計4点でボードを押さえる姿勢を取ります。
この4点の長方形の部分でボードの中心をとらえることが重要です。
ちなみにバランスは肋骨の2点で9割ほど、膝やモモで1割ほどの体重が乗るのが理想です。

正しい4点姿勢のパドリング
ノーズが少しだけ浮く位置に体を置く
ノーズが沈みすぎると抵抗が増え、逆に浮きすぎると加速できません。
乗る位置と姿勢によっては、それを意識するだけでも正確な位置に乗れますが、ショートボードの場合はロングやファンボードのように浮力の余裕がないので、適切な位置の乗らないとノーズが浮きすぎたり、沈んでしまって漕げなくなったりします。
正しい位置を一度決めてしまって、その位置に毎回乗って漕げるように意識してください。
適性浮力で適性の長さのショートボードなら、正しい姿勢を取った時にはノーズの先端から5センチから10センチほどのところに水面がある状態になるはずです。
その位置に水面が収まるように前後位置を調整してみてください。
アゴを引きバランスを取る
早く進もうとしすぎて顔が上がってしまうと、頭を上げるような姿勢になり胸を反ろうとして背中が反って【おへそ一点パドリング姿勢】になりがちです。
視線だけ前に向けるようにして、ある程度顎を引き、しっかりと真っすぐ先に狙いを定めて漕ぎましょう。
波を捕まえるときのパドリングでは、波を横から見る形になるので顎を引き視線を横に向けて波の角度を見ながら漕ぎます。
普段からある程度は顎を引いて漕げるように、位置も含めて練習してください。
3. パドリングを効率的にする「パワーハンドパドリング」
ショートボードで波をキャッチするためには、強く長く漕げるパドリング技術が必要です。VSCのメソッド「パワーハンドパドリング」は、肩から後ろに押し出すように漕ぐことで、効率的な推進力を生み出します。手を遠くに入れすぎず、肩幅程度の位置に手のひらで水をしっかり押し出すように体の軸を安定させ、無駄な動きをなくすことが重要です。
パワーハンドパドルとは、手のひらを手の甲側に折って漕ぐ方法です。
逆に「ショベルハンドパドル」になってしまう方が多いのが初心者の方の傾向です。

進まないし疲れるショベルハンド
ショベルハンドパドルとは、パワーハンドとは逆の手のひら側に手を折って漕いでしまう、いわゆるショベルカーのような形で上から水を取りに行くような漕ぎ方です。
サーフボードの構造上、前から引っ張ると前につんのめってしまう形になり、推進力がかき消されてしまいます。
パワーハンドパドルを覚えて、効率よく疲れずスピードが出る漕ぎ方に変えていきましょう。
これにより、無駄な力を使わずにスピードが出せるため、より多くの波に乗れるようになります。
4. 波の選び方とポジショニング
漕げるようになってきたら波を積極的に追いかけていきましょう!
初心者が乗れる波を選ぶことも、波に乗る本数を増やす重要なポイントです。
ブレイクし始める前の波を狙う
初心者の方はどうしても、初心者でも確実に乗れるような角度のある部分を狙いがちです。
特にショートボードだと波のキャッチが出来ずに【置いていかれてしまう】という意識が高まり、確実に滑り出す波の角度があるところに行きがちです。
最初は乗れなくても良いので『上手くなったらこのくらいの角度からテイクオフしたいな』という部分から乗るようにしていきましょう。
VSCでは”素振り”と言って、最初から波の乗ろうとせずに、厚めのうねりから素振りでタイミングを取ったり、波に押される感覚から掴む練習をしています。
正しく練習をすれば、ショートボードでも誰でもうねりからテイクオフすることは可能です。
諦めずにしっかり練習していきましょう。
早めにパドリングを開始する
初心者の方はショートボードに限らず、乗れる人よりも後からパドリングを漕ぎだす傾向があります。
これは波を見極められていないと思い込みすぎて『乗れそう!』と確信が持てるまで動かないために起こる行動です。
乗れそうと思ってから漕ぎ始めても、初心者の方はある程度パドリングがスピードに乗るまでに時間がかかるので、むしろうまい人よりも早めに漕ぎださないと乗れるようになりません。
VSCでも乗れるようになるのが早い方は、なんとなく波が来たというくらいから追いかけ始める練習をする方です。
最初は乗ろうとせずに素振りの感覚で、波が近づいてきたなと思ったらまずは漕ぎ始めて、漕ぎながら調整する意識を持ちましょう。
波のキャッチは特に「波を待つ位置」が重要で、少し沖側からスタートすると、波に押される力を最大限に活かせます。
5. 「バーチカルプッシュ」で波に押される感覚を掴む
波に乗るためには、パドリングのタイミングと波の力を活かす技術が不可欠です。「バーチカルプッシュ」は、波のうねりの力を利用し、最小限の力で波に乗るメソッドです。
VSCでは上級者がやるような【軽く漕いで乗る】ということを実現するために、バーチカルプッシュというメソッドを練習してうねりから確実に乗れるようにします。
このバーチカルプッシュとは、バーチカル(垂直)プッシュ(押す)という意味で、水面下に垂直に漕ぐことで、ボードの浮力を活かして波にボードを押してもらうという方法です。
別名”水平テイクオフ”と呼ぶものですが、VSC以外のレッスンでは板が水平になるということだけで、このバーチカルプッシュの方法ではありませんので注意してください。

ウエーブプールにてバーチカルプッシュの練習風景
※水平テイクオフと言い始めたのはVSVです。のちに言葉だけが独り歩きしてしまったため、その手法を「バーチカルプッシュ」と名付けてレッスンしています。
波を感じる
波がボードを押してくれることを感じることが重要です。
【波に乗る】とは波にボードを押してもらって乗ることで実現します。
自力で波に追いつくことは不可能です。
なので、初心者は板に浮力が無いと乗れないということになりますが、板の浮力を上げても波に押されることを感じなければいくら浮力が有っても足りません。
この練習をすること自体がショートボードで乗るコツと言っても良いくらいです。
まずは”素振り”から波に押される感覚を感じ取る練習から始めてください。
6. 立ち上がりの動作
やっと波に滑り出しても、立ち上がりで失敗してしまうと波は台無しになってしまいます。
正しい立ち上がり方から覚えて、確実にライディングを楽しみましょう。

サイドウェイズテイクオフで横向きに立ち上がる
下半身をひねりながら足を入れる
VSCではサイドウェイズテイクオフというメソッドがあります。
これはサーフィンというのは横乗りのスポーツであり、横向きにライディングをすることに意味があります。
前後左右の体重移動を容易にして、あらゆる波に対応し、あらゆる技をかけやすくするためです。
よく、ノーズの方に腰を向けるなどといったレッスンはありますが、実際には上手い人たちは腰は板と並行を保っています。
腰をノーズの方へ向けて乗っている上級者は居ません。
このため、誤解されがちですが、腰は早い段階で、立ちに行くときでさえも横に向けていく意識で立ち上がらなければ、立ち上がった後に安定は望めません。
安定して立てなければ、安定したライディングにつながらず、立ってもすぐに転んでしまうなどの現象が続きサーフィンを楽しめません。
横向きに安定して立つことを陸上で練習していってください。
まとめ
これらのテクニックを一つ一つ覚えることで、ショートボードは誰でも簡単に楽しめます。
特にサーフィンでの醍醐味でもある大きな波に滑ることで合ったり、トップアクションなどのダイナミックな技を楽しみたい方にショートボードは大きな楽しみが味わえるボードの種類です。
そこで、ライディングの前にショートボード初心者がより多くの波に乗るためには、適切なボード選びから始まり、パドリング、ポジショニング、波の選び方、テイクオフの技術、そしてライディング時の加速まで、すべての要素を理論から覚えていくことが大切です。VSCのメソッドを活用し、正しいフォームとテクニックを意識することで、波に乗れる本数が増え、サーフィンの楽しさを存分に味わえるようになります。ぜひ今回のポイントを意識して練習してみてください!
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